「FUJIFILM GFX 50R」でフルサイズ!?-85mmオールドレンズ編-
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今回はGFXシリーズの35mmフォーマットモードを使用したオールドレンズレビュー最終回。これまで「ZEISS C Sonnar T* 1.5/50 ZM」と「ZEISS C Biogon T* 2,8/35 ZM」、標準、広角とレンズの写りをチェックしてきた。フィルム時代のレンズをデジタルで使用するということは良くも悪くも写りが異なってくることが分かって頂けたと思う。最終回となる今回は中望遠の「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」の写りとGFXシリーズの相性を検証していく。GFXシリーズの35mmフォーマットモードの総括も含めてどうぞご覧ください。
GFXシリーズで35mmレンズを使うという選択肢について
わざわざ高価なラージフォーマットのカメラを買って、フルサイズ機として使うことにメリットはあるのか?
単純に解像感だけもラージフォーマットをフルで使った方が画質が良いのは一目瞭然。フルサイズなら何十万、何百万というレンズでしか味わえない立体感を良心的な値段で味わえるラージフォーマットではラージフォーマットであることが最大のポイント。しかし良くも悪くもラージフォーマットの欠点を挙げるとしたら、それは画質が良すぎること。立体的に写りすぎてしまうこと。そして何よりも純正レンズの選択肢が少なく高価なことだ。
以上のことから考えても、両方のフォーマットを使い分けることにこそ最大のメリットがあるように感じる。
35mmフォーマットモードの存在意義
そもそもGFXシリーズに35mmフォーマットモードが最初からあった訳ではない。「FUJIFILM GFX 50S」のファームウェアアップデートで初めてこの機能が追加されたのは発売から約1年経った後だった。おそらくユーザーからのリクエストが多かったからだろう。というのもフランジバックの短いGFXシリーズではフランジバックの長い過去のレンズ遺産を使い回すことができたので「FUJIFILM GF 50S」の発売以降、様々な他社製のレンズアダプターが登場してきていたからだ。
ちなみに富士フイルムの商品開発チームはいくつかのインタビューでXシリーズは必然的にAPS-Cサイズのセンサーが搭載され、ラージフォーマットのGFXと二段構えで商品を展開していくため35mmフルサイズ機は作らないことを示唆してきていたので、この機能の登場を待ち望んでいたユーザーも少なくはなかったと思う。
今回実際に「FUJIFILM GFX 50R」で35mmフォーマットモードを使ってみた率直な感想は、マニュアルフォーカスでのピント合わせはお世辞でも合わせやすいとは言えないが、35mmフォーマットモードで3000万画素相当のフルサイズ機と同等の画質を得られるので利用価値はかなり高い。と言うのも、もともと筆者は長年35mmフィルムを使用してきたこともあってMマウントレンズの遺産がたくさんあるからだ。
もちろん他社のデジカメから移行してくる人にもこのことは当てはまる。中判デジタルではレンズもそれなりに高価になってくるので、たとえ全ての純正のレンズを買うことができなくても、必要最低限の純正レンズとこれまでのフルサイズ用レンズを上手く運用することで両方の旨味を味わうことができるからだ。
ちなみに、近年登場したGFX100シリーズでは35mmフォーマットモードで6000万画素相当のフルサイズ機として利用できる。
優秀すぎる富士フイルムの画質設計
ラージフォーマットで撮る際には、粒状感を抑え諧調を滑らかにしていくことで大判フィルムカメラのような立体感のある写真に。逆にレンズの個性が多種多様な35mmフルサイズ用のレンズと組み合わせて撮る時には、敢えて粒状感を出してクラシカルに仕上げることで、平面的でフィルム写真のような写りを再現。
このように二つのフォーマットを使い分ける際に効果的に作用してくるのが、フィルムシミュレーションを筆頭にフィルムライクに画像を仕上げてくれる富士フイルムの画質設計だ。
しかもGFX50シリーズではピクセルピッチが5.3μmという余裕のあるセンサーで、解像度でいうと1.7倍くらい違う2つのフォーマットを双方高画素で使えるというメリットもある。まるで印象の違う2つのカメラを持っているような感覚すら味わえる。機動性や高速性さえ気にしなければ、これほど有意義な時間をもたらしてくれるカメラは他にはないだろう。
「FUJIFILM GFX 50R」で「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」を使ってみた!
「FUJIFILM GF 50R」に小口径の「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」と別売の「Lens shade 85mm(4/85用)」。見た目としては少しアンバランス。しかし写りに関しては、今回試した50mm、35mmの3本の中で1番安定している。F4の開放で若干周辺が光量落ちするが、一段絞れば光量落ちは解消するので特に問題ではない。むしろ、開放と絞り込んだ際に若干の変化があるので、絞りによって描写に変化を加えることができる。
ストリートスナップに最適!
「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」のスペックからも分かるように、このレンズは大口径望遠レンズのように大きく背景ボケるようなタイプのレンズではない。どちらかと言うと小口径で、レンズ構成もシンプル。3群5枚のテッサータイプで湾曲もほとんどなく、開放からとてもシャープ。ボケも良い感じ背景が残ってくれるので、ストリートスナップに最適である。
ちなみに余談だがcosinaが販売するZMレンズの中には2本だけドイツ製のレンズがあった。(現在は生産終了している。)それが15mmF2.8のDistagonと85mmF2のSonnar。そう、「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」とはまたタイプの違う85mmレンズがかつては存在していた。こちらのレンズはZMレンズにしては大口径で、価格も「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」の2倍以上。生産本数も少なかったことから現在中古市場ではレアレンズとして、当時の値段を遥かに上回る価格で販売されている。
この大口径でボケの魅力的なSonnarがあったというのもあって、「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」は低コストでコンパクト。絞り全域でコントラストの高いシャープな描写になっているというのがうなずける。
望遠系としてはあまり旨味はない?
望遠系のレンズの魅力はボケを活かした立体的な描写。35mmフルサイズ換算で85mmの立体感でポートレートなどを撮ることを考えたら好みにもよるが純正レンズの「フジノンレンズ GF110mmF2 R LM WR」や「フジノンレンズ GF80mmF1.7 R WR」の方が圧倒的に美しい。
ただ現代レンズの欠点は立体感、抜け感、柔らかく大きなボケを追求しすぎるが故に背景はボケて被写体と引き離され、臨場感はなくなり、合成写真のように被写体だけが浮いて目立ってしまうこと。そういった写真にうんざりしている方には、敢えて小口径で背景をある程度残しながら被写体を背景から引き離すのではなく、被写体を含め平面的に撮りたい場合などには「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」は向いているだろう。
GFXシリーズと35mm用オールドレンズ
35mmフィルム用のレンズ、所謂オールドレンズの魅力とは?いろんな意見があると思うが、絞り全域での描写力や機動性など数値で表すことのできるような性能では現代レンズがより優れているのは言うまでもない。高画質化していくデジタルカメラに合わせて、解像力を求めた現代レンズはあらゆる収差が抑えられ、シャープで明るいのが特徴的だ。
しかし35mmフィルムカメラの旺盛とともに進化してきたオールドレンズたちは、レンズの技術の試行錯誤により様々なレンズタイプが生まれ、写りも千差万別である。現代レンズでは悪とされるような球面収差なやフレア、ゴースト、時にはレンズに生えたカビでさえレンズの個性として魅力的な描写を与えてくれる。特殊レンズなどはなく一見するとシンプルな構造や設計だとしても、そこには数値ではあらわすことのできない美しさがたくさんあるのだ。
また今回紹介した「ZEISS Tele-Tessar T* 4/85 ZM」やZeissレンズ、Voigtlanderレンズを製作していることで有名なコシナでは、初期のトリプレットタイプから派生したテッサーやヘリアー、ゾナーなどのレンズタイプや、ガウスタイプの進化系であるビオゴンやプラナーなどのレンズタイプを積極的に採用し、面白い現行オールドレンズをたくさん販売している。デザインもクラシカルなので、富士フイルムのカメラとの相性もとても良い。
個性の強いオールドレンズと現代のデジタル技術。特に富士フイルムのフィルムシミュレーションを代表とする画質設計はこういったオールドレンズとの相性も抜群に良い。GFXシリーズは、速写性や機動性という点においては35mmフルサイズ機やAPS-Cサイズ機と比較すると、センサーが大きい分どうしても劣ってしまうが、それでもラージフォーマットと35mmフォーマットモードを行き来しながら、フィルムライクに写真が撮れることを考慮するとお釣りが来るくらいだろう。そもそもスポーツなどの写真を撮るような人でなければ、GFXシリーズの性能で十分だ。
それよりも、写真が楽しく撮れるカメラが一番な気がする。
今回使用したカメラとレンズ。「FUJIFILM GFX 50R」や「FUJIFILM GFX 50S」は近年だいぶ値下がりして、高画素のフルサイズ機と同じくらいの価格帯になっているのでかなりおすすめだ!
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