「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」実写レビュー
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ついにこの時がやってきた。フィルムライクな写りが魅力なXシリーズ。マウントアダプターを利用してさまざまなオールドレンズやフィルムカメラ用のレンズを試してきた人たちにとっては念願のレンズがコシナから登場。
その名も「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」。
発売から半年以上経つがコロナ禍の影響もあって品薄状況が続いているが、最近ではこのレンズの設計をベースに「Nikon Zfc」用の「Voigtlander NOKTON D35mm F1.2」も発表された。益々Voigtlanderが注目される中、今回は「FUJIFILM X-Pro3」で撮り下ろし!
「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」とは?
今回紹介する「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」はVoigtlanderやZeissのレンズを開発しているコシナがXシリーズ用に新たに設計したレンズ。そのモデルとなったのはVMレンズで既に絶大な人気を誇る「Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4」だと言われている。(現在は「Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4II」としてリメイクされている)
「NOKTON classic 35mm F1.4」は10年以上前にコシナから登場したVoigtlanderブランドのシリーズで、当時は250周年記念モデルとして登場した「HELIAR classic 50mmf2」(現行品は「HELIAR classic 50mm f1.5」)、「NOKTON classic 40mm F1.4」、「HELIAR classic 75mm F1.8」などと合わせてクラシカルなレンズ設計を現代テクノロジーで再現したclassicシリーズとしてライナップされていた。
これらのレンズの最大の特徴は、現代レンズのように開放からカッチリ写るというよりも、開放は球面収差などによっていい塩梅に甘く写り、数段絞るとかっちり解像していくという絞りによる表現力の高さにあった。特に「Nokton classic 35mm F1.4」は価格もリーズナブルでコーティングもシングルとマルチが選べたので、オールドレンズ風の描写を求めてる人たちにはとても人気があった。
Xシリーズ専用設計となったNOKTONは何が違うのか?
そんな「NOKTON classic 35mm F1.4」の描写を受け継いだかのように登場した「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」は、基本のレンズ設計はとても似ており、描写もかなり近い印象を受ける。もともとNOKTONという名称はノクトがラテン語で夜を意味する通り回放置がF1.5よりも明るいVoigtlanderのダブルガウスタイプの大口径レンズに与えられてきた名前。近年ではレンズの種類や設計も複雑になり、どこまでをダブルガウスタイプと呼ぶのか定かではないが、F1.5以上の明るいレンズに付けられているようだ。ちなみに元祖「NOKTON classic 35mm F1.4」は美しい伝統的な対称形のレンズ設計となっている。
元祖と写りの似ている「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」は、開放値がF1.2と従来の「Nokton classic 35mm F1.4」よりも若干明るいので、解像力のピークも早くやってくる印象だ。被写体までの距離にもよるが「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」ではF2-F2.8あたりから解像力が増してくる気がする。描写に関してはデジタルカメラに最適化されてることもあってか、開封では甘いが絞り込んでいくと想像以上にカッチリと解像していく。
そして注目したいのが従来のNOKTONやVMレンズと比べて最短撮影距離が短くなったことである。もともと明るい大口径のガウスタイプということもあってボケ感は強いNOKTONシリーズだったが、APS-Cサイズのデジカメではその効果は軽減してしまう。しかし「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」では最短撮影距離が0.3m(従来の「Nokton classic 35mm F1.4」は0.7m)なのでAPS-C用のレンズなのにも関わらず被写体との距離を詰めることによってより大きなボケ感、ヌケ感を得られる。これは従来のVMレンズやMレンズにはなかった新しい感覚だ。
ちなみにVoightlanderではバヨネット式レンズフードが基本だったが「FUJIFILM X-Pro3」でのOVFを使っての撮影を配慮して「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」ではねじ込み式のレンズフードになっている。これに関しては写真にもあるようにレンズフィルターを付けるとバランスがあまりよくないので、お世辞でも格好良いとは言い難い。個人的には基本外している。
また今回コシナのレンズを改めて使用して実感したのは、レンズの根元、距離環にちゃんと滑り止めが刻まれてる点だ。GFレンズや近年のプレミアムXFレンズでは絞りリングをロックすることができるが、基本XFレンズなどでは滑り止めがないのでレンズ着脱の際にどうしても一緒に絞りリングを回してしまったりする。レンズ交換を頻繁にする際にはこれが地味にストレスになる。その点「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」は他のVMレンズなどと同じく滑り止めが付いているのでレンズの着脱が容易というかむしろ快感ですらある。
電子接点搭載によりOVFでの撮影の質が向上!
今回「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」が注目される最大のポイントは電子接点の搭載。これによりExif情報はもちろんのこと、「FUJIFILM X-Pro3」のOVFでのパララックス補正にも対応している。また富士フイルムとコシナの対談動画によると、ソフトウェアでのレンズ補正も行なっているようだ。
実際にOVFで使用しても違和感なく、MFでピントの位置を見失いがちなXFレンズと違い、ヘリコイドユニットによるピント合わせと精度が向上したデジタルスプリットイメージの組合せは最高。フィルムカメラさながらの撮影を体験できる。もちろん「FUJIFILM X-Pro3」以外の機種でもEVFでデジタルマイクロプリズムを使用すりことで一眼レフさながらのピント合わせが可能だ。
近年のXFレンズでは新しいXF23mmf1.4からMF用スライド機構がなくなったりしているが、この撮影の快感を覚えてしまうと、ラインナップの揃ってきたXFレンズに必要なのは撮影体験の質を向上させるような「ZEISS Loxia」のような動画制作にも合うMF専用設計レンズなのでは?と思ってしまうのは筆者だけではないだろう。
しかし電子接点を搭載した「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」だが、XFレンズのようにシャッター半押しでレンズが自動的に絞りを開放にしてくれるような機能はない。そのため開放付近ではフォーカスアシストで正確なピント合わせができるが、F4くらいから遠景あたりでのピント合わせは難しくなる。EVFでじっくりピント合わせをするか、一旦絞りを開いてピントを合わせて希望の絞り値まで絞るといったように少し手間がかかる。
富士フィルムのデジカメとの相性は抜群!
富士フイルムのXFレンズやGFレンズは、言うならば凄く優等生なレンズ。フジノンレンズの名を冠しているだけあって、レンズとしてのクオリティが非常に高い。そのため良いレンズで有ればあるほど良くも悪くもレンズごとの個性というか、クセがほとんどでないのが特徴。フジノンレンズという全体で一つのスタイルを築いている印象である。
一方、コシナのVoigtkanderレンズはクセや甘さがレンズごとに程よく残っている場合が多い。良い意味でクラシカルに写るということが重要視されている。
「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」も開放付近では程よく収差など甘さがありクラシカルというか、ノスタルジックな描写をしてくれる。これが富士フイルムのフィルムシミュレーションや明瞭度などの画質設計と合わさるとあたかもフィルムで撮ったような何とも言えない雰囲気を醸し出してくれるのである
ハイライトが思った以上に粘る
また「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」は明らかに違うというわけではないが、体感でハイライトがXFレンズ(フジノンレンズ XF35mmF2 R WR)よりも少し粘る印象を受ける。
ハイライトの描写は抜けの良し悪しに関わってくるので一概にXFレンズより優れているというわけではないが、ハイライトが粘ることによって写真が少し柔らかく感じたり、色が被りやすくなることで一層フィルムっぽさを醸し出したりすることがある。そういう意味に於いては「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」はとてもフィルムライク写りをするとも言える。
ちなみにサンプルの写真を見て頂くわかるが、同じ位置から三脚で同一条件で撮影したのだが、おなじ35mmのレンズでも「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」と「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」では微妙に画角が異なる。「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」の方が若干だが画角が広い。背景のカーテンも「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」の方がわずかにハイライトが粘っている印象を受ける。一方で当然と言えば当然なのだが「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」の方が画面中心部のコントラストはわずかに高い印象を受ける。
Xシリーズの新たな可能性を切り開く「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」
AFが当然の昨今においては、純正メーカーがあえて機能を制限するようなMFレンズを開発したりすることはほんとんどない。その中で「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」のようにAFを排除することによって、ヘリコイドユニット搭載のマニュアルレンズで純正レンズよりもよりコンパクトで明るいレンズを開発するということは、サードパーティレンズとしてとても魅力がある。しかも趣味性の強い富士フイルムのカメラと、コシナのVoigtlanerは見た目も抜群に相性が良い。
フィルムシミュレーションに魅力を感じている富士フイルムユーザーにとって、XFレンズやGFレンズが充実してメーカーの方向性が明確になってきた昨今だからこそ「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」のような少し癖のある個性的なレンズはより需要がでてくるだろう。むしろこれこそが富士フイルムユーザーが待ち望んでいたレンズとなったのではないだろうか。今後もこのシリーズから目が離せなくなりそうだ。
今回使用したカメラ↓
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