フジノンレンズ「XF23mmF1.4」と「XF23mmF2」を徹底比較!
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Xシリーズが登場してから10年、初代XFレンズのリニューアルが始まった。初代「FUJIFILM X-Pro1」に合わせて登場した第一世代のレンズたちには程よい柔らかさから神レンズと呼ばれるレンズが多く存在。第二世代のXFレンズは「FUJIFILM X-Pro2」に合わせてコンパクトシリーズとして登場した。そして第3世代としてリニューアルされた「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」を含むプライムシリーズは、今年発表になる新たなセンサーに合わせて設計されているという。
そこで今回は「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」と「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」の比較を中心に、プライムシリーズがどんな描写をするのか実写レビューしてみた。後半にはラージフォーマットのボケ感と比較した写真も!
デザインとバランス
今回プライムシリーズとして新しくなった「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」は、デザインも一新された。これまでのXFレンズよりもGFレンズを彷彿とさせるような外装となっている。パッと見は現代的なレンズっぽい見た目だが意外にもXシリーズとの相性は良く、特に角形フードを装着すると長さも短くなりとても収まりが良くなる。
第一印象は初代XF23mmF1.4より口径が小さくなったもののレンズの枚数が増えたため重量感は増している。X-Pro3やX-T4ではボディバランスは少し前屈みに、決して重いわけではないが長時間片手で持っていると手首が疲れてくる感じがある。
とは言え、今回のプライムシリーズは絞りのロックボタンが新たに搭載されたので使い勝手はさらに良くなっている。 絞りのAポジションなんて使わないという人も多いと思うが、Xシリーズはカメラ設定より絞りのA(オート)ポジションをC(コマンド)に設定変更することができるので、これによりフロントコマンドダイヤルで絞り値の操作が可能となる。 この設定変更は以前のXFレンズでも可能であったが、今回ロックボタンが搭載されたことで安心してA or Cポジションを使えるようになった。
筆者も以前は絞りリングは基本マニュアル操作で回していたが、仕事でレンズ交換をよくするときはA or Cポジションにしておくことでレンズの交換の際に不用意に絞りリングを回してしまうこともなくなったし、Cポジションの場合、交換したレンズでもそのまま絞り値が引き継がれるのでスムーズな撮影が可能になった。
ついに無音を得たAF性能
コンパクトシリーズの「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」もAFに関しては、初代XF23mmF1.4よりも速く、そして静かになったと言われていたが「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」のAF性能は遥かにその上をいく。
AFスピードはもちろんのこと特に素晴らしいのは静音性能。
シャッターボタンの半押しや光量の違いで自動的に絞り羽の動く音は鳴るものの、AF駆動音は皆無。動画モードでAF-Cにしても駆動音が一切聞こえない。ちなみにプライムシリーズ以前のXFレンズだと動画撮影時にMFでもAFでもフォーカスの駆動音が気になっていた。この点だけ考えても、Xシリーズ動画制作している人にとっては必須のにはレンズと言えるだろう。
圧倒的な画質
「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の画質に関しては、巷でも散々紹介されている通り解像感が圧倒的に増している。どれくらいかを言葉で表現するのは難しいが、カメラのセンサーがワンランク上がったんじゃないかと勘違いするほどに向上している。特に収差に関しては絞り開放からフリンジもハレーションもなくボケもとてもスムーズなため、開放値がすでに2段くらい絞った状態なのでは?と思えるほどに高画質である。
「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」vs「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」
ということでさっそくコンパクトシリーズの「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」と比較撮影を行なってみた。初代XF23mmF1.4のときもそうであったが、この2つのレンズ同じ焦点距離でも画角に微妙に差がある。今回三脚にカメラを固定して撮影したのだが、「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の画角よりも「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」の方が若干広く写る。当然その分パースに関しては「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」の方が若干強く感じる。
第一印象としては「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」がまさに業務用レンズ(プロレンズ)という感じ。全焦点距離で画質、解像感が良く、どんな被写体(仕事)でも使える。この画質だったらフルサイズとちゃんと勝負できる。
中景でのボケ感は「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の方が圧倒的にスムーズで大きい。同じF2で比較してみても「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」の方が背景のボケがざわざわしているのが明らかに分かる。
これは特に接写の際に顕著で「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」はピント面だけがとてもスムーズに浮かび上がってきているのに対し、「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」は収差、滲み、レンズの渦などクセが強い。 好みの問題もあると思うが「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」がボケがうるさくて「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の方がスムーズで美しいと感じる人がいる一方で、逆に「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」は写りがシンプルでつまらなく「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」の方がオールドレンズのようで面白いと感じる人もいると思う。
ちなみにF2.8くらいまで絞ると中景では「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」の方がボケのザワザワ感があるものの、ぱっと見の印象はどちらも一緒。接写域ではやはり「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の方が圧倒的にスムーズにボケる。
またシャープに写るイメージが強いプライムシリーズだが「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」は全ての焦点距離において線が細くクリアで、ボケがスムーズなので明瞭度とシャープネスの効きもとても良い。ちょっと甘く撮りたいなっと思ったらネガ系のフィルムシミュレーションで現像設定の明瞭度とシャープネスをマイナスに設定すればとてもソフトな描写となる。強いソフトフィルター効果が必要であれば、最近流行りのブラックミストなどのフィルターを組み合わせれば十分柔らかい描写にも対応できる。
一方「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」はコンパクトでプライベートで撮るには全く問題ない性能。ポートレート撮影とかで雰囲気を出したいときは開放と接写を組み合わせるとソフトフィルターのような効果を楽しめる。逆にそういう効果が必要ないときは1、2段絞るしかないので、ある意味被写体や状況を選ぶレンズとも言えるかもしれない。
今回この2本レンズを比較してみて改めて23mmのXFレンズは接写での描写がポイントになってくるのではないかと思う。「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」はハマるとおおっとなる画が撮れるし、一方で「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」は本当に高性能。安定感が凄い。嫌なポイントがないという個性。
ちなみに初代XF23mmF1.4に関しては比較画像がないので申し訳ないが、他の第一世代のレンズ同様、大口径ならではの大きなボケととろけるような柔らかい描写が印象的。「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の描写を見た後だと開放付近でのフリンジが目に付くが、一昔前のZEISSレンズのようにプリズム(ガラス)を介してる感はとても強いので、キラキラしたエモい感じが表現できる。このレンズの描写を見ていると一概に収差が悪いとも言えなく、むしろウェットな感じが心地良く感じる。
価格だけ考えると新型の登場で中古市場で安くなった初代XF23mmF1.4を手に入れるというのも手だと思う。しかし、販売終了したレンズやカメラは修理受付期間が限られれているので長く使いたい人は注意が必要だ。(一般的にデジカメや交換レンズの修理受付期間は販販売終了してから5~8年ほどだと言われている。富士フイルムの場合も昨年初代X-Pro1が販売終了してから約5年で修理受付が終了となっている。)
焦点距離23mmの宿命
最後に注目しておきたいのは23mmという焦点距離。GFXシリーズなどラージフォーマットでは35mm判換算約19mm、フルサイズでは23mm、APS-Cでは35mm判換算約35mm。F値にもよるが印象としては、ボケにくい、立体感が出にくくなってくる焦点距離である。
ちなみにレンズのボケの大きさを単純に比較するには、有効口径(絞り面の像)の直径を求めれば良い。計算方法は焦点距離を絞りで割るだけだ。例を挙げると23mmF1.4では23/1.4=16.4mm、35mmF1.4では35/1.4=25mm、50mmF1.4だと50/1.4=35.7mmくらいになる。有効口径の直径を基本に考えるとが25mmよりも大きいとそれなりにボケて、25mmより小さくなってくるとボケないイメージだ。しかしながら実際の撮影では、そもそものレンズの焦点距離や、被写体との距離感、どれくらい近接撮影ができるかによってレンズのボケの印象は変わってくるので、有効口径の大きさはフォーマットを越えて比較する際の目安程度にしかならない。
以上のことを踏まえても、センサーサイズによって同じ焦点距離でも画角が違ってくるので、立体感、解像感が落ち始めるこの23mmという焦点距離が35mm判換算で超広角なのか、広角なのか、準広角(標準寄り)なのかは写真の写りを決める上でとても重要なポイントになってくる。例えばセンサーサイズの大きいGFXシリーズの「フジノンレンズ GF23mmF4 R LM WR」は35mm判換算で約18mmの超広角の画角となり、有効口径の直径は23/4=5.75mmとなる。フルサイズのレンズだと18mmF3.2くらいとボケの大きさが同じになるので、あまりボケないことが想定できるが、超広角でも23mmの焦点距離になるので、フルサイズよりボケがスムーズで立体的に写る印象を受ける。
このようにラージフォーマットやフルサイズでは23mm、24mmの焦点距離というと超広角レンズの部類になってくるので、遠近感が強くなった画角に対して、得られる解像感やボケ感は納得がいく。それに比べてAPS-CサイズのXシリーズでは23mmのレンズが標準と広角の間に位置するレンズになるので、ボケ感や解像感のないレンズだと他のフォーマットの同画角の描写に対して立体感がないように感じてしまう。だからこそAPS-Cサイズの23mmにはボケのスムーズさや立体感が最重要なポイントとなってくるのだ。
「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」vs「フジノンレンズ GF45mmF2.8 R WR」
ではここで「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の画質がどれほどなのか、思い切ってラージフォーマットのGFXシリーズの描写と比較してみた。使用したレンズは35mm判換算で35mm相当となる「フジノンレンズ GF45mmF2.8 R WR」。通常GFXシリーズは写真の比率が4:3になるが今回は3:2でカメラ内現像で書き出している。
また比較するにあって、通常こういった比較画像を作成する際は同一の絞り値で比較することが多いのだが今回は敢えて同一のボケの大きさなる絞り値で比較してみた。「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の有効口径の直径は約16.4mm、「フジノンレンズ GF45mmF2.8 R WR」の有効口径の直径は約16.1mmになる。意外にもこの二つのレンズ、開放でのボケの大きさはほぼ同じなのだ。フルサイズだと35mmF2相当になるが、富士フイルムのレンズは開放からしっかり写るレンズがほとんどなので、メーカーの方針として無理のない設計をしていることが分かる。とは言えセンサーサイズによって焦点距離が違うので、ボケの雰囲気や立体感は異なってくると思うのでその辺りをじっくりと見ていきたい。
ちなみに今回三脚を使ってカメラから2-3mほど被写体を撮影したのだが微妙に画角が違うのは「フジノンレンズ GF45mmF2.8 R WR」の方が3:2でトリミングすると画角が35mm判換算で36~37mmくらいになってしまうからである。
どうだろうか?「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の方が周辺の光量落ちやコントラストが強い感じはするもののだいぶ健闘しているように感じる。もちろん元のサイズの画像では2600万画素と5000万画素の差があるので圧倒的にGFXのほうが高画質で高精細なのだが、撮って出しJPGでWEBやスマホで見る分にはほとんど差を感じない。むしろ「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の方がシャープな印象すら受ける。
違いを敢えて言うなら「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」の方が背景ボケがザワザワしている印象で、「フジノンレンズ GF45mmF2.8 R WR」の方はボケの移り変わりもスムーズで線も細い。もう一つ手前のカメラから2mくらいのポールにピントを合わせてみると違いは顕著になる。
ボケ感の違いに関しては焦点距離が23mmと45mmで大きく異なるので仕方がないが、それでも「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」のこの描写は素晴らしいの一言。レタッチ耐性や画素数を抜きに考えると、サイズもコンパクトで値段も安いXシリーズ、XFレンズが如何にコスパが良いか分かる。(今回使用したレンズの価格差は1.5~2倍!!)
お互いに2段絞るとこんな感じである。コントラストの違いはあるものの、WEB用の解像度の写真ではパッと見では立体感もほとんど同じに見える。
ちなみにXシリーズとGFXシリーズのフィルムシミュレーションの画質設計は基本的には同じで、すべて統一されていると言われている。しかし写真を比べるとわかる通りラージフォーマットのGFレンズの方がコントラストが少し緩く感じるのは、開発者曰く、GFXシリーズは同じフィルムシミュレーションでもXシリーズに比べてシャドーが滑らかになるようにもともと微調整されているかららしい。また今回は撮って出しJPGのみの比較をしているが、現像やレタッチ耐性を考えると元画像がもっているダイナミックレンジや階調、高感度耐性などはGFXの方がはるかに優れているのは言うまでもない。
「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」は凄かった。
いろんなレンズと比較して「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」がAPS-Cサイズ用のレンズにしては圧倒的な解像力とスムーズなボケを持っているのが分かって頂けたと思う。半分冗談でラージフォーマットと比較してみたが、正直この結果には筆者も驚いた。ちなみに「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」は最短撮影距離も19cmと近く寄れるので使い勝手も良い。GFレンズと比較して改めてなぜ開放から徹底的に収差を取り除いたのか、高画質&スムーズなレンズを目指したのかが理解できた。
中にはプライムシリーズのレンズに初代XF23mmF1.4や神レンズ「フジノンレンズXF35mmF1.4 R」ように甘さの残るレンズを期待した人もいるとは思う。しかしAPS-CサイズであるXシリーズの純正レンズがより高みを目指すためには今回の進化は必然だったのではないだろうか。
結果的に純正レンズが最高峰を目指してくれるおかけで、ユーザーはVoightlanderなどのサードパーティレンズもその反対の志向をもったレンズとして楽しめるので、Xシリーズの写真体験の可能性がさらに広がったと素直に喜びたい。
今回使用したカメラとレンズ↓
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