「フジノンレンズ XF27mmF2.8 R WR」実写レビュー
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XFレンズの中で最も薄く、軽量であるパンケーキレンズ「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」。
価格が控えめなので、単焦点レンズのエントリーユーザー向けとして過小評価を受けがちなレンズだが、実際に使ってみるとXFレンズの中でもトップクラスの満足感をもたらしてくれることが分かった。そこで今回はこのレンズを手に入れるに至った経緯なども含め、実写レビューを中心に使用感などを紹介していく。
「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」に至るまで
写真撮影においてどのようなカメラ・レンズのセットを使うかは人それぞれ違う。いくつものカメラやレンズを使う人もいれば、ズームレンズなどで極力レンズ交換をしなくていいようにセットを組む人もいる。もちろんどんなセットを組むかは個人の自由で、プロの世界でも絶対はない。日々の仕事や制作のなかで自然と使う機材は決まっていく。
筆者も仕事では広角から望遠まで様々なカメラやレンズを使うものの、個人の制作ではGFXシリーズとGF63mmF2.8が基本。サブ機として「FUJIFILM X-Pro2」もしくは「FUJIFILM X-Pro3」とレンズ1本を一緒に持ち出すくらいだ。
今回はそのサブ機のお話。サブ機と言っても、GFXが壊れたときの代用とかそういう位置付けではなくて、GFXシリーズが主に作品用だとしたらXシリーズはオフショットや記録用としてである。基本はレンズ交換なしで、カバンからスッと出して気軽に撮れるということが条件だった。
気負いなく撮影に向かえるレンズとは
まず初めにサブ機用のレンズに使用したのが「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」。第二世代のX-Proシリーズ用にデザインされたレンズで、コンパクトと高画質が両立したとても良いレンズである。
しかしメイン機では標準レンズを使っているもののサブ機のレンズで35mm(35mm判換算50mm相当)は、手元や身近な人を撮るには距離感が近すぎて脱落。少し広角の「フジノンレンズ XF23mm F2 R WR」にすぐに変更してしまった。
「フジノンレンズ XF23mmF2 R WR」に関してはデザインや画質に関しては特に問題はなかったのだが、個人的に35mm判換算35mmのパースのかかり方(遠くのもののサイズ感や垂直水平の歪み)が苦手で、使いやすいけどしっくりこないという感じだった。これは筆者の撮影の基本画角が35mm判換算50mmにあるのが原因だと思う。
そんなこんなでまたある時はコシナの「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」に変更したこともあった。写りはNOKTONらしくクラシカルで楽しいし接写できる。デザインもとても気に入ってた。しかしなぜか腰が重い。使えば使うほど絞り込んだ際のピント合わせが焦ったい。分かっていたことだがレンズを開放よりも数段絞って使うことが多い筆者にとってX-Pro3のOVFとMFレンズでのピント合わせは、作品撮りのようにじっくり撮影したい場合にはちょうど良いのだが、サブ機としてスッと出してスッと撮るには相性が悪かった。(※ミラーレスカメラでMFレンズを使う場合、純正レンズのように絞りが自動で開かないので、実際の絞り値でピント合わせをしなければならない。開放付近では問題ないが、絞り込めば絞り込むほどピントの山が掴みにくくなる。)
実写した写真はこちらの記事でも紹介している。→SHOT ON FUJIFILM #15 「Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 X-mount」実写レビュー
そして最近、OVFを最大限に活かせる純正で何か良いレンズはないかと探していたときにふと思いついたのが「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」。
「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」は存在は何年も前から知っていたが購入リストから無意識のうちに除外されていたレンズだった。それは「パンケーキレンズ=安くてコンパクト。でも写りが悪い。」というイメージが強かったからだ。しかし実際に使ってみるとコントラストも高めでオフショットや記録用には最適。数段絞って使うことが多いので、開放値の暗さも気にならない。
また35mm判換算40mmという画角も、50mmとまではいかないが違和感なく目でみた距離感で対象を捉えることができつつ、丁度50mmの画角から数歩下がったくらい被写体とも距離がとれる。まさに”標準使いのできるレンズ”なのである。多少トリミングしても50mm相当の画角を維持できることもポイントのひとつだと感じる。
そして何よりも「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」で気に入ったのがMF(マニュアルフォーカス)のしやすさだった。
フォーカスリングのポジションと回転幅
一般的に「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」はパンケーキレンズのためフォーカスリングの幅が狭く、ピント合わせがしにくいとよく言われているのだが、実際に使ってみるとこれが良い意味で期待を裏切ってくれた。
というのも「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」ではXFレンズで主に採用されているバヨネット式のレンズフードが不採用。フィルター径&レンズの繰り出し部分の口径が39mmなのに対して、フォーカスリングは58mm相当なため、フォーカスリングの幅は狭いもののリングの前面側に指をかけることが可能。つまり横というよりもレンズ前側、もしくは斜めからフォーカスリングの角を回せる。おまけにパンケーキレンズなのでフォーカスリングの位置がボディに近い。これが不思議とLeicaやVoigtlander、ZeissのようなM型レンズを使っているような感覚を思い起こすのだ。(M型レンズではフォーカスリングと絞りリングの位置がXFレンズと逆でボディに近い位置にフォーカスリングがあることが多い。)
しかもフォーカスリングの回転幅も丁度良く、リニア設定で最短撮影距離から無限遠まで180°くらいで、撮影距離1mくらいから無限遠までが15°前後で移動可能。これがOVF使用時に最適。まるでM型レンズを使っているような動作感でピント合わせができるのだ。
特にAF前提のレンズはフォーカスリングの分解能も様々で、寄れるレンズや望遠レンズでは最短撮影距離から無限遠までフォーカスリングを何度も回さないとピントが移動しないレンズも少なくない。富士フイルムのカメラではMFの基本はフォーカスリング操作の回転速度に対してノンリニアでピントの移動量が変わるのだが、大きくピントを移動させるにはある程度早くリングを回転させなければいけない。これが直感的に操作できそうで実は直感的に操作ができない。じっくり撮りたい時、素早くピントを送りたい時など毎回移動幅が安定しないのだ。おまけにレンズによっても移動幅は違う。
ちなみに近年の富士フイルムのカメラではピントの移動幅をレンズの回転量にリニアに移動させることもできるようになった。しかしリニアだと移動幅は同じもののレンズによっては最短撮影距離から無限遠までフォーカスリングを何度も回さないといけなくなる。MFだとAE/AF LOCKやAF ONなどの機能を使わないと素早いピント合わせは難しくなる。
以上のことからやはりMFで使うことを考慮すると、よく使う撮影距離でフォーカスリングが45°以内。最短撮影距離から無限遠まででは最大でも180°くらいの回転でピントが移動しないと使い辛い。
その点「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」はフォーカスリングの最適な回転幅内でリニアでピントが最短撮影距離から無限遠まで移動してくれる。MFのしやすさだけで比較したらXFレンズの中でもトップクラスと言っても過言ではない。
ちなみに「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」のAFについては巷での噂通り決して速くはないし、駆動音も鳴る。ただ筆者はこのレンズを使う際は基本MFもしくはMF+AF ONで十分満足しているのでAF性能がマイナスポイントになることはない。むしろ感覚的にはMFレンズにAFがおまけで付いているくらいに捉えている。
堅実な写りがシンプルに美しい
さてここからは「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」の画質について。先ほども書いたがもともとパンケーキレンズはデザイン重視のレンズ(写りがいまいち)という印象が強い。ところが「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」は思いのほかキレキレで高コントラスト。MTFを見て分かるように低周波のコントラストが高いので、パッと見の抜けが良く、インスタなどのSNSやWEB用の画像など解像度がそこまで必要ない場所では特に映える。モニターで見た際の印象も良いので、撮影していても気持ちが良い。
画質のピークはF5.6で、F8から解像感が落ちるので数段絞ってF4やF5.6で使用することが多い人にとってはまさに最適。口径が小さく開放がF2.8なので大きなボケは出ないが自然な立体感を楽しむことができる。ボケ感がどうしても必要な場合はうまく近接撮影を取り入れればそれなりにボケる。
ちなみに近年は大口径で開放から使える明るいレンズが流行っているのもあってか、大きなボケが売りのレンズが多くなっている。ボケがスムーズなレンズは撮りがいもあるし、気持ち良いのも分かるのだが、あまりボカしすぎると背景が無意味になってしまう。ひどいレンズだと合成写真のように不自然な写真になってしまうので一概に明るいレンズが良いとも言い切れない。そいうことを考慮すると別にF2.0やF2.8くらいのレンズでも特に問題はない。むしろ旅行や家族写真、スナップ撮影では最適と感じている。仮にオート撮影しかしない人であっても、このレンズで撮っていれば変にボケすぎた写真が撮れることはないので安定した絵作りが可能だ。良い意味で背景のフレーミングにも意識がいく。
接写性能について
「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」は最短距離が34cm、最大撮影倍率が0.1倍なのでもう少し寄りたいという声をよく聞く。確かに最大撮影倍率が0.1倍くらいだとあともう少し寄りたいという気持ちも分からなくはない。筆者は特に問題を感じないが、もしもう少し寄りたいという人には「MARUMI DHGマクロ3 マクロフィルター」が安くておすすめだ。ちゃんと測ったわけではないが、このフィルターを使えば最短撮影距離はだいたい22-24cmくらいになる。
もともと「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」は開放で最短距離で撮ると背景ボケが騒つく印象があるが、「MARUMI DHGマクロ3 マクロフィルター」を使用した際はさらに近接撮影になることもあって背景ボケの騒つきが気にならなくなる。レンズ中央での画質も維持できているのでかなりおすすめの組み合わせだ。
ちなみにベースが堅実な写りをするレンズなのに近接でこういう変化をしてくれるレンズは個人的には嫌いじゃない。むしろ表現力の幅があって好きなくらいだ。
ただ「MARUMI DHGマクロ3 マクロフィルター」を使用する際にはひとつ注意が必要だ。「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」はフィルター径が39mmなのに対し、「MARUMI DHGマクロ3 マクロフィルター」は52mmから。そのままでは装着できない。使用するにはステップアップリングが必要になる。そこで個人的におすすめなのが「MARUMIステップアップリング39mm-52mm」。この口径のステップアップリングでは見た目も変にアンバランスになることもなく、フィルターを装着してもフィルターとフォーカスリング(口径58mmくらい)が干渉しないので特に問題なくピント合わせができる。おまけに薄くて軽い。小型軽量のメリットは無くなってしまうが、レンズフードを装着してスタイリングも楽しめる。付属するフジツボフードよりよっぽど格好良い。
ちなみに他のレンズとのフィルターの使いまわしを考えて58mm以上のステップアップリングにするとフォーカスリングが回しにくくなるのでAFでしか使わない人は問題ないが、MFでも使う人は注意が必要だ。
逆光耐性はあまり良くないが利用価値はある
パンケーキレンズなのである程度予想はしていたが「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」は逆光に弱め。見た目重視でレンズフードを使用してないのもあってか、逆光時や光源を入れたりするとコントラストが落ちることがたまにある。
しかしながら、もともと高コントラストなレンズなので逆光時にコントラストが落ちるという個性を活かして撮影に挑めば、レンズの可能性は逆に広がる。そのまま使ってコントラストを柔らかくすることもできるし、敢えてブラックミスト系のソフトレンズフィルターを使うことでシネマライクな描写に変えてしまうのもおすすめだ。
「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」のような少し欠点のあるレンズを使っていると、単調で毎回予想通りの絵を提供してくれるレンズは仕事では重宝するが、それ以外ではつまらなく感じてくる。逆に欠点や個性があるレンズは仕事では使えないケースもあるが楽しい。富士フイルムのレンズはその辺がうまく混じってるのが面白いとつくづく思う。
ACROSとの相性
最後に一点だけ付け加えたいのが、ACROS(モノクロ)との相性だ。冒頭でも述べたように「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」は低周波のコントラストが高いこともあって、想像以上にモノクロが映える。これはZeissレンズをモノクロで使用したとき感じる感覚に近い。
ACROSはレンズや設定によっては凄く抜けの悪い眠い描写になってしまうが、このレンズに関しては気持ち良いくらいにハマる。是非試して欲しい組み合わせだ。
最高のサブ機は実は最高メイン機なのか?
使い始めてから対して月日も経ってないのにここまで「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」に対する想いを語って自分自身もどうかしてるのではないかと思っているのだが、「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」は本当に良いレンズとは何か?ってことを考えさせてくれるレンズ。
おそらく初めて富士フイルムのカメラを買った人や、エントリーモデルから入門した人たちにとっては買いやすい単焦点レンズだろう。もっと良い画質を求めて高価な憧れの明るいレンズへ!F1.4凄い!プライム凄い!GFX凄い!ていう人も少なくはないと思う。でもやっぱり写真撮影ていうのは撮りたい!カメラを持っていきたい!いい写真がとれた!誰かに見せたい!残したい!数年経って、こんな写真撮ってたんだ!って思い返す。そういう一連のイベントや体験が重要なのであって、そこを目指しているのが「フジノンレンズ XF27mm F2.8 R WR」なんだと思う。
総括してカメラを持ち出したくなるレンズが最強なのだと改めて実感されらたレンズだった。
今回使用したカメラとレンズ↓
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