フジノンレンズ「XF33mmF1.4」と「XF35mmF2」を徹底比較!
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「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」の後継レンズとして、焦点距離を33mmに新たに登場した「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」。その真価とは?
今回は「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」のレビューを基本に、その対極にあるだろう同等の画角である「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」と比較してみた!
なぜ「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」と「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」の比較か?
多くのレビューでは「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」と「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」を比較するだろう。しかし本サイトでは、違う切り口からレビューしていきたい。なぜなら、そもそも「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」は、富士フイルムXシリーズの初期のレンズ。写りに関しては神レンズと呼ばれるが、それ以外に関しては時代の経過を感じざるを得ない。ある意味でデジタル時代のオールドレンズなのだ。
もちろん写りに関しては、古き良き時代の価値観が残っており、富士フイルムが販売継続を宣言するくらいなので、その人気は不動のもの。興味があれば持っていても、損をしない一本。比較の必要もないだろう。当然写りに関しても「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」や「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」とは全く異なり、旧時代の良さが残っているので、それが好きな人に「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」や「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」をおすすめするのも、ナンセンスに感じる気がする。
ということで、今回はデジタル黎明期、40MP対応の「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」と「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」の2本に関して写りをみていきたいと思う!
洗練されたデザイン
まずカメラに装着した第一印象。思ったほど大きくない。先行して「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」を使用していたこともあり、ある程度の大きさは予想していたんだが、レンズフードを着けなければ、違和感なく使える印象だ。レンズフードを付けなければ、、、
そして大きさよりも、新たに設置された絞りロックボタンや、絞りのクリック感、新デザインのフォーカスリングなど、どちらかと言うとGFレンズに近いデザインの数々が、とても心地よい。特に新しいレンズのフォーカスリングは、従来のものと違い埃が入りにくく、高級感をさえ感じられる。
圧倒的な機動力
AFに関しては、言うまでもない。動画制作を意識したリニアモーターによるAFの静音性は完璧で、ほぼ無音だ。筆者は動画制作をしないので、特に音に関してはあまり意識はしないのだが、それでもガソリン車と電気自動車くらいの差は感じる。
特筆すべきはMF時のピントリング。「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」では、無限遠投から最短撮影距離までピントリングを一周以上回さなければいけなかったのが、「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」では、ほぼ90°で無限遠から最短撮影距離まで移動してくれる。これはMF時のフォーカシングに間違いなく良い結果をもたらし、筆者のように、レンジファインダーカメラ用MFレンズに慣れた人でも違和感なく使用できる。リニアモーターを搭載した最上級のAFレンズでありながら、MFにも完璧に対応してるあたり、さすがプライムシリーズと言うだけのことはある。
大きさの弊害
一方で「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」には、問題点もある。これはX-Proユーザー限定なのだが、フォーカスリングの精度が変わってMFしやすくなった反面、レンズが大きくなったことで、OVF使用時にブライトフレームの中にレンズが入ってくるのだ。
余談だが、GFXシリーズで、X-Proシリーズのようなハイブリッドビューファインダーを搭載したカメラが登場しない理由が、この点にあると言われてる。レンズが大きくなりがちなラージフォーマットにハイブリッドビューファインダーを装着するとしたら、ファインダーをある程度レンズから離さないといけないらしく、かなりボディが大きくなってしまうらしいのである。レンジファインダースタイルに合わせて、新しいレンズラインを開発するにもコストがかかるだろうし、もしあり得るとしたら、X-100シリーズのような一体型のカメラしかないだろう。
少し話は逸れてしまったが、要するにレンジファインダースタイルのカメラは、大きい(長い)レンズとの相性が悪い。これは第三世代のプライムレンズ全般に言えることだが、特に「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」にレンズフードを装着した時は目障りで、フレームの中に1/3程度レンズが入ってくる。(別売りの角形フードは付属よりも多少小さい) しかもフォーカスリングが先端方向で長くなったこともあり、場合によっては、ピントリングを回す手もブライトフレームに入ってくる。(改めてLeicaなどのMマウントレンズが先端部分に絞り、フォーカシングレバー付きのフォーカスリングがボディ側に搭載していることに、納得がいく。)
この辺りの使い勝手に関しては、X-Proシリーズには明らかに「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」の方がマッチしており、どちらのレンズをメインで使用するか、悩むポイントになっている。ただ、そもそもOVFを使わない、MFしないという人には、全く関係のない話だ。
弱点を改善した最高級の画質
それではここからは実際に撮った写真を見ていこう。今回は同じく40MP対応の「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」と比較したのだが、実は解像感に関してはそこまで違いを感じられなかった。比較に使用したのが26MPの「FUJIFILM X-T4」だったので、もしかすると40MPのカメラだとまた感じ方は違うのかもしれない。
仮に、第一世代の「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」と比べたら数段に解像感は上がっているかもしれないのだが、「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」と比較すると、同等といった言葉が的確な気がする。ただし、レンズそのものの性質は若干異なる。
「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」は、一見するとコントラストが高く良く解像しているように感じるのだが、俗に言う線が太い感じで、精細さや細かさみたいなのはあまり感じない。一方で「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」は、良い意味で柔らかく、描写も精細でとても線が細かい印象を受ける。「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」と同じ条件で撮影すると、少しインパクトが弱い印象も見受けられるが、人物撮影などではこの柔らかさが活きるだろう。この辺りは何を撮るかや、好みでも評価が分かれそうである。
しかしながら接写での撮影となると、違いは顕著である。特に「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」は、接写時の解像感はずば抜けており、単色収差や色収差は全く感じられない。(※スマホの画面などでは差が分かりにくいので、ぜひ大きな画面で確認して頂きたい。)
こちらの写真を見ても分かる通り、「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」では、収差による滲みが出てピントの山が曖昧になってるのに対し、「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」では、多少のはフリンジはあるものの、ピント面のシャープさ、そしてピントが合ったところからボケていく描写の線の細さが際立つ。特に写真右下の樹皮の部分の描写を見ると「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」は、画面全体でしっかりと解像し、ピントが面できているのがとても分かる。以前レビューした「フジノンレンズ XF23mmF1.4 R LM WR」もそうだったが、新しいプライムシリーズでは、接写での性能向上が著しい。
次にどちらもF2.8まで絞り込んだスライドを見て頂くと、ボケの感じはかなり近くなってくる。(画角が広い方が「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」)しかしここでも「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」は、中心から周辺に行けば行くほど描写が甘くなっていく。これはF4まで絞っても改善されなかった。
このように「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」は、ピントが画面全体で面でくるので、構図の自由度が高い。仮に接写で被写体を画面端で捕らえたとしても、ピンはしっかりとくる。それに比べ「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」は周辺が弱いので、良くも悪くも視線が画面中央に向く。そのため構図の自由度は低いが、画面中心で被写体を捕らえたときは、印象的な写りをする。
これに関してはどちらが良くてどちらが悪いというわけではないが、レンズそれぞれの個性が接写では色濃く出ていると言えるだろう。ちなみ「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」はこの写真が最短での撮影になるが、「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」はここからさらにピントは手前までくる。最短でもここまで解像していると流石に驚く
ボケ方には思ったより差がない?
意外な結果に筆者も驚いている。「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」は「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」の後継機だと思い込んでいたのだが、この結果を見ると「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」の後継機なんじゃないかとも思えてくる。
まずこちらのF2で比較した写真を見ていただきたい。被写体までの距離感は1m前後。F2まであたりのボケ感はかなり近い。当然、少し冷静になって画面から離れてみると、「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」の方が四隅のボケはスムーズで、玉ボケも綺麗な印象を受けるが、以前「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」と「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」を比較した時のように、「これが大口径レンズね!」というような明らかな違いはない。(→こちらの記事「SHOT ON FUJIFILM #8 フジノンレンズ「XF35mmF1.4」と「XF35mmF2」を徹底比較!」)
「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」をよりスムーズにF1.4にしたと言われた方が、納得がいく描写。このボケ感の違いは焦点距離を2mm短くした結果なのだろうか?「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」のような、従来のガウスタイプを彷彿とさせるボケの大きな大口径レンズとは、少し違う写りを提供している気がするというのが正直な感想だ。
焦点距離33mmの優位性
「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」と「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」を比較使用して、気づいた点をここでは明記しておこう。まず焦点距離距離が2mm短くなったことにより、多少だが背景の情報量が増している。焦点距離の2mmは、撮影時の体感ではあまり変化が無いが、撮っていくうちにじわじわと違いが感じられてくる。
特にスナップシューターで50mm相当を愛用する人は、撮影時の被写体との距離感に馴染んでいる人が多いので、写りとしては、望遠系より35mm相当の背景描写に惹かれる人が多い。だから換算53mm相当になる「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」より、ちょうど50mm相当46.6度の視野を提供してくれる「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」の方が、心地良く感じる人も多いだろう。
また、あくまでも体感の話になるが「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」の方が、全域で歪曲収差も少ないように感じる。「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」の時は、たまに背景の線が歪むことがあったが、「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」では、歪みは一切感じない。そのためか、背景や画面の中の直線が、とてもスッキリしているように感じられる。
APS-Cを超えていくレンズ
今回のレビューを振り返ってみると、「フジノンレンズ XF35mmF1.4 R」のようなオールドスクールな写りを期待している人には、少々残念な結果になってしまったのだが、「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」は35mmフィルムのような写りを目指しているレンズではないことが、この比較から分かって頂けたと思う。
特に仕事で使う人は、F1.4から問題なく使用できる「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」の方が断然おすすめだし、全域で高解像になったことで、APS-Cサイズということを忘れさせてくれる。
また作品制作を重点に置いている人や、撮影体験を重視したい人にとっては、APS-Cの持ち運びしやすいカメラでありながら、フルサイズや、条件によっては中判カメラのような柔らかいボケ味得られるレンズだと言えるだろう。その上、MF時のフォーカスリングの回り幅や、フォーカスリングや絞りリングのデザイン、46.6度の画角などの改善点の影響もあり、「フジノンレンズ XF33mmF1.4 R LM WR」はフジノンレンズの中でも、間違いなくトップクラスのクオリティを持ったレンズである。
とは言え、「フジノンレンズ XF35mmF2 R WR」のコンパクトさや、コストパフォーマンスも捨てがたい。特にスナップシューターや、そもそも絞り込んで写真を撮る人にとっては、こちらのレンズでも十分すぎる写りを提供してくれる。接写での描写も、個性と割り切ってしまえば特に気にならないレベル。デザインもXシリーズのカメラにマッチしているので、個人的にはかなり好きなレンズだ。
最終的には「個人のスタイルに合わせて選べば良い。」というのが結論になってしまうが、どちらのレンズも甲乙つけがたいのが事実。筆者もしばらくの間、両方のレンズを使ってみようと思う。
今回使用したその他のレンズ↓
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