新たな撮影体験「X half」の可能性
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FUJIFILM X-HF1(以下通称”X half”)は、スペックや画質だけで評価するカメラではない。
本記事では実際の使用感と実写を手がかりに、このカメラがどのような撮影体験を意図して設計されているのかを読み解いていく。X halfが示す“次のフェーズ”とは何か。その輪郭を、撮られた写真とともにひとつずつ言葉にしてみたい。
生まれるべくして生まれたカメラ

X halfは、オールドスクールなカメラ文化を“そのまま保存する”のではなく、現代的な体験として再設計したカメラだ。
往年のレンジファインダー機を思わせる佇まいでありながら、製品ロゴにはあえて筆記体を採用している。若いデザイナーが担当したカメラというだけあって、これまでにないアイディアが詰め込まれた一台となっている。
興味深いのは、RicohがPENTAX 17でハーフサイズのフィルムカメラを発売した直後に、フィルムメーカーである富士フイルムが「ハーフサイズ」という概念そのものを、デジタルにリブランディングしたカメラを投入してきた点だ。
フィルム写真への最大限のリスペクトを示しつつ、時代のニーズに合わせて変化を受け入れる。その柔軟さこそが、富士フイルムという企業の強さなのだと思う。
というのも近年、フィルム価格の高騰により、かつては安価で気軽に撮れた「写るんです」でさえ、本体と現像を含めると5,000円前後かかる時代になってしまった。円安の影響でスマートフォンやデジタルカメラは高騰し、気軽さの象徴だった使い捨てカメラですら、もはや“安い選択肢”ではなくなっている。その結果、世間のニーズは「チープコンデジ」という、どこか懐かしいコンパクトデジタルカメラへと向かっていった。
そこに一石を投じたのが、X halfである。
いわゆるチープコンデジよりも大きなセンサーを搭載し、富士フイルムの代名詞ともいえるフィルムシミュレーションが選択可能。 ハーフサイズカメラを思わせるデザインでありながら、現代のスマートフォン文化に親和性の高い縦位置構図を前提とした設計になっている。
撮影からデータ化、プリントに至るまでを一貫して楽しめるよう、ソフトウェア面まで含めて丁寧に作り込まれている点も印象的だ。
価格のロジック

いわゆるチープコンデジが、JPEGのみ・1/2.3型センサーくらいで2〜5万円程度なのに対し、RAW現像が可能な1インチセンサー搭載の高級コンパクトデジカメは15万円前後。 そのちょうど中間となる10万円前後を狙った富士フイルムの価格設定は、非常に分かりやすい。(2026年1月現在、約9万円。2026年2月末まで1.5万円のキャッシュバックキャンペーン中)
そもそもAPS-Cを主軸とする富士フイルムにとって、1インチセンサーのコンパクトデジカメにハイスペックな機能を与える意味は薄い。スペックを求めるのであれば、APS-CのXシリーズを提示すれば十分だからだ。
実際、レンズ一体型のFUJIFILM X100シリーズは大成功を収めているし、近年発売された最小サイズのFUJIFILM X-M5に至っては、第4世代センサーと第5世代画像処理エンジンを搭載し、画質面ではフラッグシップと比較しても遜色ないレベルを、比較的低価格で実現している。
そう考えると、X halfに性能を求めること自体がナンセンスに思えてくるほど、Xシリーズの中では明確な線引きがなされている。
X halfはデジタルカメラの入門機のように見えながら、実際にはまったく別の思想で設計されたカメラなのだ。
しかし価格を「チープコンデジ」と「高級コンデジ」の中間に設定したことで、「1インチセンサーの高画質コンパクトカメラ」を求める層と、「手軽に感覚的に写真を撮りたい」層、この二つの異なる期待を同時に背負うことになった。その結果、このカメラの評価は大きく二分されてしまったのである。
カメラとしてのX half

では実際、カメラとしてX halfはどれくらいの完成度なのか。
ここからは、実機を使って感じた点を軸に見ていこう。
物としての存在感

率直に言えば、耐久性にはわずかな不安を感じるものの、プロダクトとしての作り込みは非常に丁寧だ。
デジタルカメラにおいて、プラスチックボディ=脆弱というイメージはいまだ根強い。しかし内部が詰まったデジタル機では、必ずしもそうとは言えない。むしろ金属ボディはコストが高く、振動を逃がしにくい、電波干渉の原因になるなど、設計上のデメリットも多い。
X halfのボディはほぼプラスチック製でありながら、手に取ると軽すぎない。安っぽさを感じさせない重量配分がなされている。
また、レンズ前玉や背面液晶を見ると、最初からプロテクトフィルターが一枚噛ませてあるようにも見え、日常使用を前提とした設計思想が感じられる。
レンズキャップについても同様だ。「なぜ金属ではないのか」という声もあるが、レンズ接触面にはプラスチック、外周と着脱部にはゴムを使い、実用性と安全性を優先した構造になっている。 結果として、道具として非常に扱いやすい。
一方で不満点を挙げるなら、絞りリングの質感と、電源ボタンを兼ねたフィルム巻き上げレバーの頼りなさだ。 全体の完成度と比べると、やや詰めが甘く感じられる。
儀式が必要な操作感

基本操作をタッチパネルに全面的に依存する設計には、正直なところ不安があった。 しかし実際に使ってみると、操作は驚くほどスムーズで、ストレスを感じることはほとんどない。これは良い意味での誤算だった。
問題は電源操作である。フィルム巻き上げレバーとの兼ね合いから、電源のオン・オフには独特の「儀式」が必要になる。 操作自体は難しくないが、複数人で使う場合、初見で理解するのはほぼ不可能だ。
もしこの手順を誤ることで故障につながるのであれば、日常使いのカメラとしては致命的になりかねない。
1インチセンサーという画質

X halfは「デジタル写ルンです」のようなイメージで語られることが多い。
フィルムシミュレーションを前面に押し出したプロモーションも相まって、チープコンデジと同列に比較されがちだ。KODAK FZ55などが引き合いに出されるのも、必然だろう。
しかし、最低感度ISO200で、グレイン・エフェクトや各種フィルターをすべてオフにしたとき、このカメラははっきりと「1インチセンサーの写り」を見せる。 想像していた以上に素直で、情報量のある描写だ。

またJPEGのみのカメラではあるものの、露出をややアンダー気味にしておけば、ハイライトは意外なほど粘る。 ±2/3段程度の補正であれば、レタッチ耐性も十分で、画質の破綻を気にする必要はない。多少の色温度調整も可能だ。


レンズは10.8mm F2.8、35mm判換算で約32mm相当。有効口径は約3.86mmと小さいが、近接では適度なボケも得られ、立体感のある描写が可能だ。回折の影響はF5.6くらいから生じるので、ソフトフォーカスのような効果を得るにはF8以上絞ると良い。


話題のグレイン・エフェクトについては、一番弱い設定にしても強め目のノイズが加わる。高感度時に現れるノイズを活かす場合は、ISO800くらいからがおすすめだ。










改善点①:MFの実用性

まず指摘したいのはフォーカスシステムだ。
X halfはMF、AF-S、AF-Cを備え、ファームウェア1.3ではAFエリアも9点から選択できるようになった。しかし、問題はMFの実用性にある。
MFはフォーカスリングで操作するが、レンズの有効口径が小さいため、開放でも被写界深度は深い。35mm判換算で言えば焦点距離35mmのレンズF9前後の感覚だ。 その結果、3m〜無限遠ではほぼパンフォーカス状態になり、フォーカスピーキングを使ってもピントの山がほとんど見えない。実質的にMFが有効なのは、最短距離0.1m〜3m程度に限られる。ファインダーを覗きながらのMFは難しく、距離計やフォーカスピーキングをモニターで確認する必要がある。
皮肉なことに、フィルムカメラモードでは画面が固定されるため、距離計がゾーンフォーカスとして機能する。この状態のほうが、圧倒的に使いやすい。 3m以上は目測MF、接写はAFと割り切れば、成功率はかなり高い。
だからこそ疑問が残る。なぜ最初からゾーンフォーカスを採用しなかったのか?
PENTAX 17のように絞りリングをゾーンフォーカスにして、そこにAFへの切り替えを加えた設計にしていれば、素通しのファインダーでも、画面を確認せずに撮影できたはずだ。
改善点②:フィルムカメラモードとISO

次に気になったのが、フィルムカメラモード時のISO設定である。
このモードでは画面が固定されるため、Mモードでの撮影ができず、PまたはAモードに限定される。そしてISOは自動的にオートになる。スナップ用途であれば問題はない。しかし、多少ブレても構わないから画質やトーンを揃えたい、あるいは作風を意識したい場合、ISO固定ができないのは大きな制約だ。
そもそもフィルムカメラにISOオートという概念はない。感度は固定されているからこそ、作風が生まれる。
この点はファームウェアで改善可能なはずで、ぜひ対応してほしい部分だ。
改善点③:日付の刻印


最後に、おそらくバグと思われる点を挙げておく。
ACROSやセピアで撮影した際、日付の刻印だけがカラーになる仕様だ。意図的な演出とは考えにくく、違和感が大きい。 これは早急に修正されるべきだろう。
X halfというスタイル

ここまでファーストインプレッションとしてX halfについて語ってきた。
総じてこのカメラは、デジタルカメラが「スペック重視の時代」から次のフェーズへ移行しつつあることを象徴する存在だと言える。
見方を変えれば、X halfはこれまでのデジカメの常識「高画質・高性能・多機能であることこそ正義」という価値観を、真正面から跳ね返すカメラでもある。
最高のスーパーサブ機

すでにスマートフォンとは別に高画質なカメラを所有している人にとって、X halfは最高のサブ機になり得る。常にバッグやポケットに忍ばせ、思い立ったときに気軽に撮る。 操作が極端にシンプルなので、パーティーや旅行の場で、チェキのようにみんなで回しながら使うこともできる。
一方で、まだカメラを一台も持っていない人や、富士フイルムのカメラに触れたことがない人にとっては、評価が分かれるだろう。
スペックを求めるとメイン機としては物足りなさを感じるし、ハマれば上位機での撮影体験が気になってしまう。 そういう意味ではX halfは入門機にとどまり、結果的にFUJIFILM X-M5や上位機を選べば良かった、という結論に至る可能性もある。
偶然性を引き受けるためのカメラ

X halfはXシリーズに属してはいるが、その本質は他のXシリーズとは明確に異なる。
1インチセンサーのX halfに、APS-CのXシリーズと同等の画質を求めるのはナンセンスだ。 実際、フィルムシミュレーションやグレインノイズに関しても、X-half独自のチューニングが施されている。
だからこそ、このカメラはサブ機として唯一無二の絵を吐き出す。
サブ機であるなら、ライトリークのようなエフェクトを使い、偶然性を楽しんでもいい。 完璧な再現性よりも、「どう写るかわからない」という余白を楽しむためのカメラだと言える。
スペックありきではないからこそ、期待できる展開

X halfについて、スペック論争を続けることに大きな意味はないだろう。 むしろこのカメラには、モノとしての可能性の方が確かにある。
たとえば、X halfという名称のままの軽量・安価モデル。あるいはFUJIFILM X-HF1という型番を冠した、アルミ(金属)ボディの上位ライン。
複数のデザインバリエーションやカラーバリエーションが展開されても不思議ではない。
X halfは、「選ぶ楽しさ」「所有する楽しさ」を素直に拡張できるプロダクトだ。スペックではなく、スタイルで選ばれるカメラだからこそ成立する展開でもある。
今後、富士フイルムがこのカメラをどのように育てていくのか。 その方向性そのものを、楽しみにしたい。
今回使用したカメラやアクセサリー↓
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